目の下のクマというと、「疲労による青クマ」や「たるみによる黒クマ」を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、これらとは異なり、目の下が赤みを帯びて見える「赤クマ」という種類が存在します。
赤クマは、その色味から、単なる血行不良や色素沈着ではなく、皮膚の構造や慢性的な炎症が深く関わっていることが特徴です。そのため、一般的なクマのケアでは改善が難しく、原因に応じた専門的なアプローチが必要です。
今回は、赤クマの正体を深掘りし、その主な原因、自宅でできるセルフケアの限界、そして専門の医師が推奨する美容医療による根本的な改善方法までを、詳しく解説します。
医師が解説する「赤クマ」の正体と見分け方
赤クマを正しく改善するためには、まずご自身のクマが本当に赤クマなのか、あるいは他のクマと複合しているのかを正確に把握することが重要です。
赤クマの定義:なぜ赤く見えるのか
赤クマは、主に以下の2つの根本的な原因によって目の下が赤やピンク、または薄紫色に見える状態を指します。
1. 眼輪筋(がんりんきん)の透けによる赤み(構造的な原因)
目の周りの皮膚は、体の中で最も薄い部類に入ります。その薄い皮膚のすぐ下には、目を囲むように存在する眼輪筋という筋肉があります。
- メカニズム: 眼輪筋は通常、血流が豊富で赤みを帯びた筋肉です。加齢や眼精疲労、遺伝的な要因などで、目の奥にある眼窩脂肪が前方へ突出し、「ふくらみ」ができると、その上にある皮膚が引き伸ばされてさらに薄くなります。その結果、眼輪筋の色がより強く透けて見えるようになり、赤クマとして認識されます。
- 複合: この原因は、影によって黒く見える黒クマの原因(眼窩脂肪の突出)と密接に関連しており、「赤クマと黒クマの複合型」として現れることが極めて多いです。
2. 慢性的な炎症や毛細血管の拡張による赤み(皮膚科的な原因)
皮膚そのものの問題や、血管の異常によって赤みが生じるケースです。
- メカニズム: アレルギー(花粉症など)やアトピー性皮膚炎、あるいは過度な摩擦(メイク落としや目元を擦る癖)などによる慢性的な刺激と炎症が原因となります。炎症が続くと皮膚のバリア機能が低下して薄くなり、その下にある毛細血管が拡張したり、真皮の血管が透けやすくなったりして赤く見えます。
- 複合: この場合、摩擦によってメラニン色素の生成も促されるため、茶クマ(色素沈着)を併発しているケースも多く見られます。
赤クマのセルフチェックポイント
鏡を見ながら、ご自身のクマが赤クマかどうかを判断するための簡単なチェック方法です。
| チェック項目 | やり方 | 該当する場合の可能性 |
|---|---|---|
| 目の下の膨らみ | 横から見て、下まぶたに脂肪のふくらみがあるか確認。 | 眼輪筋の透けによる構造的な赤クマ(黒クマの原因) |
| 赤みの部位 | 膨らみの最も下の部分(涙袋のすぐ下)が赤く見えないか。 | 眼輪筋の透けによる構造的な赤クマ |
| 上を向いた時の変化 | 鏡を前に置き、顔ごと真上を向く。 | 赤みが薄くなる、または消える場合は黒クマ/構造的赤クマ |
| 引っ張りテスト | 目尻を横に優しく引っ張る。 | 赤みの色自体はほとんど変化しない場合、茶クマや炎症が複合している可能性 |
| かゆみ・乾燥 | 目元に慢性的なかゆみや乾燥、湿疹がないか。 | 皮膚炎・炎症による赤クマの可能性 |
特に「目の下の脂肪の膨らみ」と「膨らみの下の部分の赤み」が同時に確認される場合、眼輪筋の透けによる構造的な赤クマである可能性が非常に高いです。
赤クマの主な原因:構造、炎症、血行不良の関係
赤クマは単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生・悪化することがほとんどです。
1. 眼窩脂肪の突出と眼輪筋の透け(構造的な問題)
目の奥にある眼窩脂肪が、眼球を支えるロック機構(眼窩隔膜・靭帯)の緩みにより前方へ押し出されることで、目の下にふくらみを作ります。
- 加齢による変化: 目の周りの筋肉(眼輪筋)や、皮膚を支える靭帯が加齢とともに衰えることが最大の原因です。
- 骨格による影響: 若い世代でも、生まれつき眼窩が大きく、脂肪が突出している骨格の方は、早期に赤クマや黒クマが現れることがあります。
- 悪循環: 突出した脂肪が皮膚を物理的に引き伸ばすことで、皮膚はさらに薄くなり、眼輪筋の赤みは強調されます。この構造的な問題が主である場合、自力での改善は非常に困難です。
2. 皮膚炎・アレルギーによる慢性的な炎症
摩擦や炎症は、皮膚を薄くするだけでなく、クマを複合的に悪化させます。
- 慢性的な摩擦: メイク落としで強く擦る、花粉症やアレルギーで目を掻く、コンタクトレンズの着脱で下まぶたを引っ張りすぎる、といった日常的な行為が、皮膚に微細なダメージを与え続けます。
- 皮膚のバリア機能低下: 炎症が続くと皮膚のバリア機能が破壊され、水分が蒸発しやすくなり、乾燥肌になります。乾燥した皮膚はさらに外部刺激に弱くなり、真皮の血管が透けやすくなります。
- 茶クマの併発: 慢性的な炎症は、肌の防御反応としてメラニン色素の過剰生成を招きます。これにより、赤みの上に茶色い色素沈着(茶クマ)が重なり、赤茶色の複合型クマとして現れることもあります。
3. 血行不良と薄い皮膚(青クマとの複合)
赤クマは、青クマの原因である血行不良とも関連しています。
- 青クマの原因: 睡眠不足、疲労、冷え、眼精疲労などにより血流が滞ると、酸素濃度の低い暗い色の血液(静脈血)が透けて青く見えます。これが青クマです。
- 赤クマとの関連: 特に皮膚が極端に薄い方は、血行不良による青みに加え、血流が停滞して血管が拡張することで、赤みが増して見えることがあります。この場合、青紫がかった赤クマとして観察されることが多いです。
このように、赤クマは「構造的な赤み」「炎症による赤み」「血行不良による赤み」が複雑に絡み合っているため、自己判断せずに専門医の診断を受けることが、治療の成功に不可欠となります。
赤クマの改善方法:セルフケアと美容医療
赤クマの治療は、その原因が「構造的なもの」か「皮膚炎・炎症によるもの」かによって、アプローチが大きく異なります。
◆セルフケア:炎症を抑え、血行を促進する
セルフケアは、皮膚炎や血行不良が原因の赤クマに対しては有効ですが、構造的な赤クマ(眼輪筋の透け)には効果が限定的です。
1. 徹底的な摩擦レスケア(皮膚炎・炎症タイプに必須)
最も重要なのは、目元への刺激を完全に断つことです。
-
クレンジングと洗顔:
- アイメイクは専用のリムーバーを使用し、コットンで決して擦らず、優しく押さえるように色素を吸い取ります。
- 洗顔時も、泡で優しく包み込むように洗い、タオルで拭く際もポンポンと押さえるだけにします。
- 塗布方法: 化粧水やクリームを塗る際も、指の腹で軽くタッピングするか、優しく滑らせるように塗布します。
- かゆみ対策: アレルギーによるかゆみがある場合は、市販薬ではなく、皮膚科で処方される抗アレルギー薬やステロイド外用薬で炎症を徹底的に鎮めることが最優先です。
2. 炎症を鎮め、バリア機能を高める保湿
皮膚のバリア機能の回復を促す成分の配合された低刺激のスキンケアを選びます。
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推奨成分:
- セラミド、ヒアルロン酸: 皮膚の水分保持能力を高め、バリア機能をサポートします。
- 抗炎症成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど): 慢性的な炎症を穏やかに鎮めます。
- ビタミンC誘導体: 抗酸化作用とメラニン生成抑制効果があり、炎症後の色素沈着(茶クマの予防)にも役立ちます。
- スキンケアの選択: 敏感肌用、アトピー肌用の製品など、刺激の少ないものを選びましょう。
3. 目元を温める(血行不良タイプに有効)
血行不良が関与している赤クマや、眼精疲労が原因で眼輪筋の緊張が強い場合に有効です。
- 方法: 蒸しタオル(水で濡らして絞ったタオルを電子レンジで30~40秒温める)や市販のホットアイマスクを使用し、5~10分程度優しく目元を温めます。
- 効果: 温めることで、血管が拡張し、血流が改善されます。また、眼輪筋の緊張が緩和され、眼精疲労の改善にも繋がります。
◆美容医療による専門治療:原因に応じた根本的アプローチ
セルフケアで改善しない赤クマや、構造的な原因が主である場合は、美容医療による専門的な治療が不可欠です。
1. 構造的な赤クマ(眼輪筋の透け)へのアプローチ
原因である「眼窩脂肪の突出」と「皮膚の薄さ」を根本から解決します。
| 治療法 | メカニズムと適応 | メリット・デメリットと注意点 |
|---|---|---|
| 目の下の脱脂(経結膜脱脂) | 突出した眼窩脂肪を、まぶたの裏側(結膜)から取り除く手術。構造的な膨らみを根本的に解消することで、皮膚の伸展が解消され、眼輪筋の透け(赤み)が大幅に改善されます。中等度以上の膨らみに最も適した治療です。 | メリット: 膨らみと赤みの根本的な解決。再発しにくい。皮膚を切らないためダウンタイムが短い。 注意点: 脂肪を取りすぎると凹み(くぼみ)になるリスクがあるため、医師の技術力が非常に重要です。 |
| 脱脂+脂肪注入(ナノ・マイクロファット) | 脱脂で膨らみを取り、同時に採取した自身の脂肪を目の下の凹みや、特に皮膚が薄い部分に注入する方法(ハイブリッド治療)。脂肪が「クッション層」となり、眼輪筋の透けを物理的に隠し、赤みをより確実に解消します。 | メリット: 凹凸のない自然な仕上がりと、赤みの確実な改善。脂肪の定着が良い。 注意点: 脱脂に加えて脂肪採取の手間と時間が必要。注入した脂肪の定着率に個人差がある。 |
| ヒアルロン酸注入 | 凹んでいる部分にヒアルロン酸を注入し、影(黒クマ)を解消しつつ、皮膚と血管・筋肉の間にボリュームを持たせて赤みが透けるのを物理的に軽減させます。軽度の構造的赤クマや、脱脂後の微細な調整に適しています。 | メリット: ダウンタイムがほとんどなく、手軽。溶かして修正が可能。 注意点: 中等度以上の脂肪の突出には適応外。注入量が多すぎるとかえって不自然な膨らみになるリスク(チンダル現象など)がある。 |
2. 炎症・血管が原因の赤クマへのアプローチ
皮膚の炎症を鎮め、異常に拡張した毛細血管にアプローチします。
| 治療法 | メカニズムと適応 | メリット・デメリットと注意点 |
|---|---|---|
| Vビームなどの血管系レーザー | 血管内のヘモグロビンに反応する波長のレーザーを照射し、拡張した毛細血管を収縮・破壊することで、赤みを軽減します。皮膚炎後の赤みや、慢性的な血行不良による血管の目立ちに効果的です。 | メリット: 赤みに特化した治療。ダウンタイムが比較的短い。 注意点: 複数回の照射が必要となることが多い。照射後に一時的に内出血のような状態になることがある。 |
| 美白・肌再生治療(専門外用薬、ピーリング) | ハイドロキノンでメラニン生成を抑制し、高濃度ビタミンA(レチノール)などで肌のターンオーバーを促進。炎症後の色素沈着(茶クマ)と、薄く弱くなった皮膚のバリア機能の回復を促します。 | メリット: 自宅で継続的なケアが可能。肌質改善全般にも有効。 注意点: 外用薬は医師の指導のもとで使用が必要(赤みや刺激感のリスク)。効果が出るまでに時間がかかる。 |
複合型クマの診断と治療戦略
目の下のクマは、単独で存在する方が珍しく、ほとんどのケースで青クマ、黒クマ、茶クマ、赤クマが複合しています。赤クマの治療を成功させるには、これらの複合要因を正確に見極めることが極めて重要です。
複合型クマの具体的なケースと治療戦略
| 複合型クマ | 特徴 | 優先すべき治療法 |
|---|---|---|
| 赤クマ + 黒クマ | 眼窩脂肪の突出による影(黒)と、眼輪筋の透けによる赤み(赤)が同時に出現。最も多い複合型。 | 脱脂(経結膜脱脂)が第一選択。膨らみを解消することで影と赤みの両方を根本から改善。凹みが残る場合は脂肪注入を追加。 |
| 赤クマ + 茶クマ | 摩擦や炎症による皮膚のバリア機能低下と、それによるメラニン色素の沈着が併発。 | まずは摩擦レスの徹底と炎症鎮静(外用薬など)。色素沈着に対してはピコレーザーや美白外用薬。構造的な赤みがあれば脱脂も検討。 |
| 赤クマ + 青クマ | 血行不良による青みと、血管の拡張や眼輪筋の透けによる赤みが混在。皮膚が極端に薄い方に多い。 | 軽度であればヒアルロン酸注入で皮膚に厚みを持たせる。血行促進のためのセルフケアも重要。血管の拡張が目立つ場合は血管系レーザーも有効。 |
なぜ専門医の診断が必要なのか
最適な治療法を見つけるためには、自己判断を避け、クマ治療に精通した専門の医師による正確な診断が不可欠です。
- 原因の正確な特定:
- 赤みが眼輪筋の透けによる構造的なものか、それとも炎症や血管による皮膚科的なものかを見極めます。
- 特に「構造的な赤クマ」は、セルフケアやレーザーでは根本治療ができず、外科的治療(脱脂)でなければ改善が困難です。
- 複合型の見極め:
- 青クマ、黒クマ、茶クマとの複合度合いを正確に診断し、それぞれの原因に対して最適な治療を組み合わせたオーダーメイドの複合治療プランを策定します。
- リスク回避:
- 特に構造的な赤クマに対して、脱脂せずに安易にヒアルロン酸を多量に注入すると、かえって不自然な膨らみが増し、老けた印象になるリスク(チンダル現象や水分の吸収による膨らみ)があります。専門医は、そのリスクを見越した上で適切な治療を選択します。
まとめ:理想の目元を手に入れるために
目の下の赤クマは、単なる疲労やメイクで隠せるものではなく、多くの場合、眼窩脂肪の突出による「構造的な透け」や、皮膚炎による「慢性的な炎症」が大きく関わっている複雑な症状です。
最適な治療法は、患者様お一人おひとりの原因と症状の程度によって異なります。
- 炎症や血行不良が強い場合は、まず皮膚科的な治療や適切な外用薬で炎症を鎮めることが最優先です。
- 眼窩脂肪の突出による構造的な赤クマの場合は、脱脂や脂肪注入といった外科的アプローチが最も根本的で確実な改善に繋がります。
自己判断せずに、クマ治療に精通した専門の医師による正確な診断を受け、ご自身のクマの原因に応じた適切な治療プランを選ぶことが、失敗せずに理想の目元を手に入れるための近道となります。
当院では、カウンセリングを通じて、患者様の赤クマの原因を正確に見極め、レーザー治療から外科的施術、専門外用薬まで、幅広い選択肢の中から最適な治療をご提案しています。まずはお気軽にご相談ください。